ラ・ベンタ遺跡公園(3)祭壇(玉座)

ラ・ベンタ遺跡公園展示品紹介の続き。今回は祭壇を紹介します。これまでの記事はこちら。

ラ・ベンタ遺跡公園(1)「歩く人」「髭の男の石碑」
ラ・ベンタ遺跡公園(2)巨石人頭像の謎

祭壇は全部で7つ。これらは実際には、王が座る玉座であったと言われています。以下、展示順に掲載しています。

目次

祭壇6:四角形の祭壇

Altar 6: Altar Cuadrangular

中央の人物が座って腕を膝に置くようなポーズをしています。
実はこれはラ・ベンタ末期につくられたものだそう。末期以前は、人物が赤ちゃんを抱いている祭壇が多いのですが、末期になるともうその表現は用いられなくなったようです。

鼻から下に損傷があり、顔の様子はあまりわかりません。その他の祭壇の多くも同様に損傷を受けており、地中に埋められた状態で発見されました。
巨石人頭像と同様に、支配者の死後傷つけられ、埋められたのでしょうか。

祭壇5:子どもの祭壇

Altar 5: Altar de Niños

洞窟の穴から現れた人物が、ぐったりとした子どもを抱いています。

洞窟は神聖なるジャガーの口と考えられており、それはつまり地下世界への入口だとされていました。当時の世界観では、太陽は沈む(=地下世界に入る)とジャガーの姿となって、夜のあいだ暗闇の地下世界を闊歩し、夜が明ける(=地下世界から出てくる)と再び太陽として現れると考えられていたからです。

この人物は、洞窟(地下世界)に出入りできる強力な力の持ち主である、という表現のようです。普通の人間は、地上と地下世界を行ったり来たりはできないですからね。この人物(支配者と考えられます)が、超自然的な存在であることを示しています。

人物が頭にかぶっている帽子のようなものは、トウモロコシを象っているように見えます。支配者が農業を司っていることの表れでしょうか。
腕の筋肉の描写がすごくないですか? 人間の体を非常によく観察しているなと思います。
あとなんか耳が大きいな… と思ったら耳飾りでした。

子どもは生贄です。薬(幻覚剤)を与えられ、ぐったりしているのとのこと。オルメカの地域では雨が非常に多く降り、降りすぎて農業に影響を与えるほどだったため、生贄は雨を止めるためのものだったそうです。マヤの他の遺跡では雨乞いの生贄や像もあるので、いろいろですね。

幻覚剤は当時、神聖な儀式に欠かせないものだったようです。オルメカ文明やその他メソアメリカ文明の美術において、幻覚剤の描写は数多く出てきます。幻覚剤はキノコ等の幻覚成分を持つ植物から取り出していたようです。

さてこの祭壇の特徴は、左右両面にも人物が彫られているところ。

左面
右面

大人が子どもを抱いています。大人は皆、中央の人物の方を向いています。
子どもの様子はいろいろで、大人しく抱かれていたり駄々をこねていたり、大人の顔で遊んでいるように見えます。それに子どもたち、奇妙な顔をしてますね。これは、お面をつけているからではないかとのこと。儀式に関わる演劇の様子を表しているのでは、と考えられているようです。

不思議なことに、お面を用いた演劇は世界のどの文明でも行われていたとか。日本の場合は能ですね。

これらの人物はくっきりはっきりと描かれており、良い道具もなかっただろうにすごい技術だなと思います。メソアメリカでは金属も用いられなかったので、おそらくナイフのように削った石で彫ったんですよね。

祭壇1:ジャガーの祭壇

Altar 1: Altar felino

だいぶ壊れてしまっていますが、ジャガーの顔をした祭壇です。ジャガーそのものなのか、巨石人頭像のようにジャガーに似せた支配者なのかはわかりません。

オルメカ美術の特徴の1つ、Ceja flameada(燃え上がる眉)が見えます(眉の部分に縦にラインが入っている。斜めにラインが入ることもある)。これは、メソアメリカで行われていた焼畑農業への言及とのこと。ジャガーは火を象徴する動物でもあったようです。この眉を持つ顔は頻繁に出てきます。

祭壇7:フクロウの祭壇

Altar 7: Altar de los tecolotes

なぜフクロウなのか謎ですが、中央に描かれている顔がフクロウのようだと最初の発見者が思ったんでしょうか。

私には猿の顔のように見えます。左右には、人物が人差し指を立てて向かい合っている様子が見えます。対話の描写なのかもしれません。

祭壇4:勝利の祭壇

Altar 4: Altar Triunfante

雨の濡れ跡でなんだか怖いことになってます…。それに濡れているせいで描写がよく見えない!!
Altar 4 de La Venta で検索すると、晴れた日のしっかりとした写真がいくつも出てきますのでよろしければそちらをご参照ください。

祭壇5 と同様、中央の人物が洞窟から現れ出るように座っています。この写真だと見にくいのですが、人物の周囲には4つのトウモロコシが放射線状に彫られています。

上方にはジャガーの顔。中央にある楕円形の2つの穴が鼻の穴。その下が口と牙ですね。左右上部に見えるのが燃え上がる眉、その下に目が描かれています。これは焼畑農業への言及。トウモロコシと考え合わせると、豊穣を祈るための祭壇と思われます。

さて祭壇の最下部には縄が描かれており中央の人物が握っていますが、その先には捕虜が描かれています(祭壇右面)。

手を胸の前に置く動作は服従を表します。衣服も身につけていませんね。戦争で捕虜となり、これから生贄にされる存在であると考えられます。

祭壇3:対話の祭壇

Altar 3: Altar del diálogo

これもかなり壊れてしまっていますが、中央に人物。子どもは抱いていません。お腹の部分には「耕された焼畑」を表すシンボルが描かれているようです。顔の様子はやはりわかりませんね。

この人物の右側には、立っている人物が薄彫りで描かれています。ちょっとお腹が出ているどっしり体型、典型的なオルメカ人です。

また、祭壇の左面には、2人の人物が向かい合って対話している様子が描かれています。

中央に、一段高い場所に座っている髭を蓄えた人物。座る高さ、立つ高さはすなわちその人物の位の高さを表します。
人差し指を立てながら相手に何かを教えているような、諭しているような雰囲気です。髭(人工髭)は、年齢を重ねており豊富な知識を持っていること、高い社会的地位の象徴。

左側に、一段低い場所に座っている人物。中央の人物よりも地位は低い。この人物も、人差し指を立てて話しているように見えます。何か意見を交わしているようにも見えます。

祭壇2:浸食された(風化した)祭壇

Altar 2: Altar erosionado

確かにかなり風化しています。子どもを抱いているのは分かりますね。
「浸食された(erosionado)」となっていますが、祭壇下部の足部分の保存状態が良いことから、雨や水等による浸食で劣化したのではないと考えられます。損傷は意図的なものでしょうか。

埋葬地の謎

ラ・ベンタで発見された7つの祭壇を紹介しました。

さてここで祭壇4と祭壇5の埋葬地について書いておきたいと思います。この2つの祭壇は、南北に細長い丘の左右に埋められていたそうです。つまり祭壇は、東側と西側に置かれていた。

そして各祭壇は、彫られた洞窟=ジャガーの口、つまり地下世界への出入口を持っています。
太陽が地下世界から昇り、また地下世界へと落ちていく。その場所に、支配者が生贄を抱き農業を象徴した祭壇をつくって置いたということです。

オルメカ時代の人々の世界観が感じられます。

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※本文中の展示品についての記述は、メキシコの大学で受けたメソアメリカ美術の授業内容に基づいています。

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